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大人のアメコミ [ウォッチメン] と [キングダムカム]。DCの贈る濃密なヒーロー群像劇。初心者にもおススメ【WATCHMEN + KINGDOM COM レビューとあらすじ】

 

 アメコミの収集にハマった時期がありました。今では大半をデータ化してしまいましたが、裁断するのが惜しかった作品がいくつかあります。

 

 その中の2つが「ウォッチメン」「キングダムカム」です。どちらもDCコミックから出版されています。

 

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WATCHMEN と KINGDOM COME。どちらも超名作、おススメ

DCコミックとは?

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出典:https://www.dccomics.com/

 

 マーベル・コミックと並ぶ二大アメコミ出版社の一つです。メディアミックス路線…コミックだけでなく映画などの配給も行っている点でも共通しています。

 

 超有名どころではスーパーマン、バットマンはDCの所属ヒーローです。この2人がDCの稼ぎ頭といってもいいでしょう。近年映画化されたヒーローでいえばワンダーウーマン、アクアマン、グリーンランタン、ザ・フラッシュなどもDC出身のヒーローです。

 

 当初は子どものものだったヒーローの物語も、世界中で映画が流行していることからも判る通り、大人でも楽しめるものとして認知されています。

 

WATCHMENについて

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岡田斗司夫氏も絶賛とのこと。…なぜ岡田斗司夫…?

 

 ウォッチメンは1986~87年にかけて出版されたコミックです。1998年に再販され、2009年に映画公開と時期を同じくして再再販されました。それまでは翻訳版は全く手に入らずプレミアもつき幻とまで言われていましたが、今では供給が安定しています。助かる!

 

 アメコミは原作と作画が分かれるのが普通なのですが、原作はアラン・ムーア氏が担当しています。

 

アラン・ムーア

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出典:https://geekvibesnation.com/alan-moore-expands-on-his-opinions-on-comic-books-and-comic-book-films/

 

  このアナーキーなおじさんがアラン・ムーアです。

 

 当時子ども向けだったコミック業界に足を踏み入れ、「この媒体の一番の魅力さは『下品さだ』」「コミックはあまりお金がない人たちの娯楽だ」などの強い信念のもと、名作を生みだしました。鬼才とすら言われています。

 

 ジョニーデップが主演をした「フロム・ヘル」はアランムーア原作の同名コミックの映画化です。ナタリー・ポートマンの「Vフォー・ヴェンデッタ」もそうです。そして今回初会している「ウォッチメン」も彼の代表作の一つです。作中には当時の映画技法では表現できない描写があるため、2009年にようやく映画化しています。

 


Watchmen [2009] - Intro

ボブ・ディランの「時代は変わる」に載せたイントロ。最高

 

 残念なことに、すでに彼はコミック業界からは引退しており「コミックにはもう興味がない」と述べています。コミックからは下品さが失われ、カネにまみれてしまった。「子ども向けにつくられた作品を見るために列をなすのはまるで幼児退行のようではないか」とすら現状を断じています。

 

 そんな鬼才の残した貴重な作品、ウォッチメンは彼の言う「下品さ」に満ちているのでしょう。そりゃあ期待せずにはいられませんよ。

 

WATCH MENのあらすじ(極力ネタバレなし)

 

 1985年、ニューヨークで一人の男が殺される。警察の捜査が一通り終わった夜、一人の男が部屋に忍び込む… 彼の名は「ロールシャッハ」。ヒーローの勝手な活動を禁じる法律ができた後も活動し続けるモグリのヒーローだ。彼は、殺された男が政府公認のヒーロー「コメディアン」であることを突き止める。

 

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「コメディアン」殺害。なぜ彼は殺されたのか?が話の根幹

 

 世界は冷戦の最中にあり、核戦争まで秒読みとされるまで状況は悪化している。人知を超えた力を持つ「Dr.マンハッタン」の登場や、先に書いた法律の施行により、古き良きヒーローたちは引退してそれぞれの生活を送っている。

 

 ロールシャッハはそんな元ヒーローたちのもとに行き「『ヒーロー狩り』が始まったのかもしれない」という警告を伝えに行く。しかしその仮説を信じる者は少ない。

 

 そんな中、Dr.マンハッタンが「とあること」からマスコミの糾弾にあい、姿をくらます。アメリカの戦略的切り札であったDr.マンハッタンが消えたことで、これを好機と見たソビエトは侵攻を開始。世界情勢は一気に悪化する。元ヒーローの一人が暗殺未遂にあうなどする中、ロールシャッハも罠にかけられ、殺人容疑およびモグリのヒーローとして活動したことで投獄される。

 

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ロールシャッハ。冷静にイカレている。彼が大好きです…!

 

 一連の事件を経て『ヒーロー狩り』の説を信じた旧ヒーロー「ナイトオウル」は、気が抜けたような生活から一変、コスチュームに身を包み奮起。ロールシャッハの脱獄を手助けし、2人で調査を進める。旧友に助力を求めるべく、元ヒーローのもとに2人で訪れるが、そこで意外な黒幕が明らかになる…

 

 核戦争は、世界はどうなってしまうのか?ヒーロー狩りの真相は?

 

WATCH MENの魅力

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カバー内の表紙。この印象的なマークが本作のどこで現れるか?も必見

 

 とにかく絵がウメェ!もうこれだけでご飯がいくらで食べられる。アメコミ全般に言えることかも知れないですが、とにかくウンメェです。絵的な伏線を残して次のページ、みたいなパターンも多くてすげえです。

 

 そしてあらすじに書いたような重厚なストーリー…。 冷戦中に登場する超パワーを持つヒーロー、それによりさらに悪化する米ソ関係。もはやパンチやキックだけではどうしようもなくなって追いやられる旧ヒーローたち。しかし世界の危機に直面し、かつてのように正義に立つ旧ヒーロー… 熱い。すげぇアツい。

 

 すごく非現実的なことを描写しているはずなのに、自分と重ねて見ることができる等身大のヒーロー像がここにあります。年を取るということ、好きなことをやめなければいけない虚しさ、自分が急速に時代遅れになっていく惨めさ。でも手放せないもの。ダメだ忘れないとと思いながらも昔のようにバカ騒ぎして、目が輝きが戻ってくる感じ。

 

 なぜだろう…すごく沁みるんです。

 

 私が初めて見たときは10代でしたが、今読むと受ける印象が違います。当時はよくできたヒーロー群像劇としか思ってなかった気がします。いまでは沁みます。オジサンにも刺さること間違いなしです。

 

 登場人物は多いのですがヒーローものなので外見が区別つき易くてサクサク読めます。勧善懲悪!という分かりやすいストーリーではないのでそこは好みが分かれるかも。私はとにかくロールシャッハが超カッコよくて好きです。やるしか、やるしかないんだ。

 

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設定資料が追加されていてスゲェ嬉しい

 KINGDOM COMEについて

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まるで宗教的な書物のような厳かな装丁。寺田克也氏も推薦!

 

 「キングダムカム」は1996年に出版された、マーク・ウェイド氏原作のアメコミ。マーク氏も「スターウォーズ」シリーズスピンオフのコミカライズや、「キャプテンアメリカ」「フラッシュ」「デアデビル」などを担当したビッグネームです。

 

  そしてなんといっても作画のアレックス・ロス氏。一枚一枚がコミックというより、もはやアート。ポスターにしてくれたら部屋に飾りたい。内容もさることながら、絵を眺めているだけで息を飲むような迫力がこの「キングダムカム」の魅力です。

 

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出典:https://www.alexrossart.com/

 

 DC、次の映画化はコレだろ!コレの布石でフラッシュとかワンダーウーマンとかやったんだろ!知ってるぞ!

 

シャザム!(キャプテンマーベル)について

 

 コレを知ってるか知らないかで面白さがかなり違うので、急ぎ足で説明します。

 

 かつて「キャプテン・マーベル」という大人気ヒーローがいましたフォーセット・コミックから1940年(!)にスーパーマンを追っかける形で生まれ、結果大当たり。映画化までされました。

 

 しかし、スーパーマンを抱えるDCと裁判沙汰に。まあ類似点が多いのでそりゃそうです。10年以上にわたる裁判の結果、DCには数千万ドルが支払われ「キャプテンマーベルはもう出版しない」ということで和解。数年後にはフォーセットからはコミック部門も無くなってしまいました。

 

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Wikipediaより引用:https://en.wikipedia.org/wiki/File:WhizComicsNo02.jpg

キャプテン・マーベル。赤いスーパーマンって感じ

 

 それから時は経ち、当のDCがフォーセットからライセンス契約してキャプテン・マーベルをDCから登場! …させようかとおもいきや、そこにはMARVEL製の「キャプテン・マーベル」が。しかも商標登録済み。映画をご覧になった方もいるかもしれません。

 

 そう、上の絵のキャプテンマーベルと、MARVELのキャプテンマーベルは別人です。

 


映画『キャプテン・マーベル』本予告

これ、MARVELのマーベル(超ややこしい)

 

 そういうわけで、旧キャプテンマーベルは「シャザム!」という名前に変更され今に至ります。なので以後は仕方ないので「シャザム」と呼称します。

 

 ともあれこのシャザム、「精神年齢は子どもだが超絶強い」のが特徴で、そのパワーはスーパーマンに匹敵するといわれたほど。

 

 スーパーマンってMARVELやDCのヒーローを全部並べた中でも規格外のヒーローで、まあガチでやって彼を倒せる人はいないよね、っていうのが共通認識としてあります。そのためにクリプトナイトっていう分かりやすい弱点があるわけですし。

 

 そんな彼とガチンコでやりあえるヒーロー、シャザム。シャザムとスーパーマンの両雄が並び立っちゃうKINGDOM COME。それがどういうことを意味するか …熱い!

 

KINGDOM COMEのあらすじ(極力ネタバレなし)

 

 世界には特殊な能力を持った新世代ヒーローたちがあふれ、好き勝手に暴れていた。ヒーローも悪人も、一般人にとっては強烈な力を持つイカレポンチだった。一般人は巻き込まれる形で大きな被害にあっており、街は蹂躙されていた。

 

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ゴンドラの上で戦う「自称ヒーロー」。もはやヒーローではない

 

 かつて治安を維持していたスーパーマンは、凶悪なヴィランでも殺しはしない、という矜持を持って活動していたが、当時の世論はそれが気に入らなかった。悪人を派手に殺すヒーローに支持が集まり、支持を失ったスーパーマンは隠遁生活を送っていた。

 

 彼が隠居し「派手に殺すヒーロー」に人気が出た結果、世界は先に述べたような状態に陥っていた。大きな被害が出る事件が起こり、「ワンダーウーマン」はスーパーマンの元に訪れ、それを伝える。スーパーマンは再び、人々の前に姿を現すことを決意する。

 

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ジャスティス・リーグ参上。かっけぇ~

 

 スーパーマン率いる「ジャスティスリーグ」はヒーローを教育する収容所を作り、世界を安定させようと行動する。一方、バットマンが率いる「アウトサイダーズ」は人々を守るという共通の目的のために、レックス・ルーサーと手を組む。彼のそばには「キャプテン・マーベル」が…

 

 新生代ヒーローたちの収監があらかた終わったとき、収容所では暴動が起こってしまう。諍いが始まり仲間割れするジャスティスリーグ。暴動を鎮圧しようとスーパーマンが駆けつけたところに現れるキャプテン・マーベル…

 

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この威圧感。尻もちをつくスーパーマン。鳥肌たった

 

  さまざまな思惑のもとに激突するヒーローたち。人智を超えた戦いに怯え、彼らを核で一掃しようとするアメリカ国家。結末やいかに!

 

KINGDOM COMEの魅力

 

 とにかく絵がウメェ!(本日二度目)もうコミックっていうかアートです。一枚一枚がアートって凄くないですか?デッサンに寸分の狂いもないってどういうこと?どうやって描いてんの?

 

 絵のうまさはもう見てもらうしかないので、ほかの話します…。

 

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ナイスミドルになったスーパーマン。胸のロゴのヌキが黒いのがカッコいい

 

 とにかくDCコミックの誇るヒーローたちが大集合!というところが大きな魅力です。スーパーマン、バットマン、レックス・ルーサー、シャザム、ワンダーウーマンが共演するってだけでアツいんですが、何より脇役たちがスゴい。

 

 何しろ登場する殆どのヒーローはかつて主役・準主役・メイン悪役を張っていたやつなんです。キャプテン・アトムとかチョイ役(重要な役ではあるのですが)で使われてますが、こいつも結構歴史あったりするキャラで、最近は映画にもチョイチョイ出てくるぐらいのヤツです。

 

 それぐらいのヤツらが大量に出てきて、オールスターで大戦争するわけです。そりゃ面白いよ。

 

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並んだ立ち絵。オマケページに一人一人の名前が書いてたりします

 

 アメコミは日本の漫画と違って、版権を出版社が持つのが普通です。なのでこういうヒーロー大集合!ということが比較的簡単に実現できます。代わりに毎回作画が違うので当たりハズレがあったりしますが、このキングダムカムは太鼓判です。

 

 並んでるヒーローたちの名前が片端から紹介されてたりするので、そいつらを海外のWikipediaで調べたりするとまた面白い。マーベルもディズニーもそうですが、キャラクターをたくさん抱えている会社は全員大集合!ができるから強いですね。

 

総括

 

 この2冊を同時に紹介したのは、視点に類似点が見られるからです。

 

 キングダムカムもウォッチメンにも共通してるのは「アニメに出てくるような『ヒーロー』たちが実際にいる世界はどうなっていくか?」のシミュレーションを含んでいる、ということ。

 

 「ウォッチメン」は現実世界の出来事をベースにヒーローの存在を違和感なく溶け込ませ、ヒーローの存在によって現実世界よりも自体が悪くなっていった世界を描いています。対して「キングダムカム」はスーパーマンのいる世界をベースに、ヒーローの存在に翻弄される世界を描いています。

 

 どちらも、ヒーローが実際にいたら人類にとってどういう存在になるのか?人智を超えた彼らを誰が制御するのか?という、「ヒーローものを取り扱ってきた作品がスルーしてきた現実との摩擦」をテーマにしていると感じます。ゆえに、ヒーローものをよく読んできた方ほど面白い。

 

 ヒーローって何だろう?という、とてもシンプルなテーマに挑んだ作品とも言えるこの2冊。日本のマンガは世界最高峰と信じて疑いませんあが、たまには口休めにアメコミなどもいかがでしょう。表現や視点が違ってハッとさせられることも多いですよ!

 

 

本日はコレにて。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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